神主魂の継承・・・319年続く「神祇祭」

  • 2024.03.15 Friday
  • 12:22

祭りは参列者があるのが普通ですが、参列者のいない奉仕する神職(神主)だけの神事もあります。先般、当宮司家が御宿となって、当地近隣の神職だけに伝わる「神祇祭」(じんぎさい)が執り行われました。

この祭りの毎年の記録簿『神祇講帳』には宝永2年(1705)から記載されており、現在まで319年間一度も欠くことなく実施されてきたことが確認できます。

 

祭場は神社ではなく御宿の神職宅とされ、天神地祇(てんじんちぎ)八百万(やおよろず)の神々にご降神願う神籬(ヒモロギ)祭祀で行われ、御宿の神職が斎主となって講員全員(今年は12名)で奉仕されます。

 

祭日は3月5日。神前には神饌のほか各講員からの幣帛料と神祇講帳が供えられ、祭典では神祇講帳に記載されている特別の祝詞が奏上され「平戸神楽」を数番奉納。「昇神」の後、祭場にて「直会(なおらい)の儀」となります。引き続き別室で直会があり、本年と来年御宿の神職と立会人三者により「神祇講帳」の引き渡し式が「三々九度」の形式で盃を酌み交わして執り行われ、講帳を来年の御宿へ手交して、つつがなく本年御宿の大役を終えることが出来ました。

伝承される神祇祭祝詞で「神職相互が相互扶助のうえに大同団結し、神職の本分を全うできるよう」に神明に誓い祈願され、こうした先賢神職から不変の神主魂を、年に一度この神事を奉仕し継承する中で確認し自戒する、極めて大切な神事です。

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    春告げ大祭「祈年祭」

    • 2024.02.19 Monday
    • 11:58

    令和6年早春を飾る大祭「祈年祭」(きねんさい/としごいのまつり)が2月17日、氏子崇敬者の代表50余名が参列して執り行われ祭典で、宮司祝詞に続き氏子総代会長と農協理事が交々ご本殿に参内して祈願詞を奏上、神楽舞奉納の後参列者はそれぞれ玉串を奉り拝礼し今年の五穀豊穣と皇室の弥栄、国家安泰と国民の安寧を祈りました。

     

     

    この祭りは天皇陛下が宮中でご奉仕になり、伊勢神宮では陛下の妹様、黒田清子さまが祭主としてご奉仕になり、これに倣い全国の神社でも執り行われるもので、11月23日の収穫感謝の大祭「新嘗祭」(にいなめさい)に相呼応する春立つ初めのお祭りです。

     

    瑞穂の国日本では米作りの周期を一年ととらえ「年」は稲を表し、祈年祭の名称の通りその年の米の無事収穫はすなわち国と国民の幸せを担保するものでした。古事記・日本書紀において米作りは高天原で神々が行ってきたことを神様が地上に降りて国土を治めるにあたり、天照大神様が天皇さまのご祖先に米作りをご一任なされたと語られており、日本の建国の由来の基本に米作りがおかれています。この神話が連綿と天皇陛下に受け継がれ、今現在に至るまで皇室の日々のご生活で実践され、全国の神社の祭りで祈られて続けているのです。神話が今に息づく国、日本をあらためて誇りに思う次第です。

     

    よく「農は国の基(もとい)である」と申しますが、この言葉の原点も実は日本書紀にあります。崇神天皇の詔に「農は天下の大本なり。民の恃(たの)みて以て生くる所なり」とあります。よって古来から農に勤しむ人々は国の宝として敬われ、田部(たべ)が民(たみ)、田部の人々を指す田族(たから)が大御宝(おおみたから)の語源とされ何れも国民の総称を意味します。時代は変わろうとも米作りは神事であり、国づくりであるとの精神は変わりません。

     

    近い将来必ず食糧難の時代に入るといわれ、また農業基本法改正に向けて食糧自給率の向上や農産物の輸出なども議論されているようです。今日の祭りに、日本の国柄に思いを致し、殊にふるさとの農業の現状を知り、みんなで考え支え合ってゆく契機となれば幸いです。

     

    最後になりましたが、能登半島地震で犠牲となられた方々のご冥福を祈り、被災者の皆様にお見舞い申し上げ、早期の復旧復興をお祈り申し上げます。

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      祈りのご存在

      • 2023.11.25 Saturday
      • 16:14

      11月23日「勤労感謝の日」は、年間三つの大祭の締めくくりにして、収穫感謝・勤労感謝の大祭「新嘗祭」(にいなめさい)が執り行われます。本年も関係者60余名が参列し、新嘗祭の趣旨を受けて各営農組合様をはじめ農業従事者の皆様より、献穀米と数々の瑞々しい秋の収穫物をうるわしくお供えされる中、豊穣の悦びに満ちて厳粛裡に目出度く仕え奉られました。

       

      このお祭りは天皇陛下が23日夜から翌未明にかけて宮中でご奉仕になる新嘗祭に習い、全国の神社で執り行われるものです。こうした天皇陛下のお祭り事を宮中祭祀(きゅうちゅうさいし)と申し上げますが、天皇陛下が装束を召されおん自らご奉仕になるお祭りだけでも年間約三十回を数え、その中で最も大切なお祭りが新嘗祭で、即位後最初の新嘗祭を大嘗祭として特に盛大に行われますことは、令和の御代替わりでご承知の通りです。

      もう四十日足らずでお正月を迎えますが、元旦の早暁朝五時半、極寒の中、天皇陛下は宮中賢所の神嘉殿(しんかでん)前庭に降り立たれ、設えられた遥拝所にて伊勢神宮と東西南北の四方の神々を拝礼され、国と国民の一年の安泰を祈られる「四方拝」をご奉仕になられます。その作法は立ったり座ったりを五度も繰り返す両段再拝というこれ以上ない丁重な作法で祈られます。五つの方角ですから合計二十五回です。その後「歳旦祭」を奉仕され、元旦の諸行事に臨まれるとともに、三権の長をはじめ国内外の要人約七百名と面会され、新年祝賀をお受けになられます。そして翌二日は、一般参賀で慣例では午前三回午後二回お出ましになります。・・・

       

      元日も、今日の勤労感謝の日も祝日として多くの国民が休み楽しむ中、天皇陛下はこのようにひたすら国安かれ民安かれと神々に、私たちの真似することのできない極めて厳しいご作法をもって祈りを捧げられていることを、新嘗祭に当たり私たちはおもいをいたし、皇室をいただく瑞穂の国日本の国柄を誇りたいと存じます。

       

      今年もあますところひと月余りとなりました。来年が平和で穏やかな年となり、五穀豊穣と諸産業の発展、ひいては郷土の繁栄、氏子崇敬者皆々様のお幸せを只管ご祈念申し上げます。

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        秋うらら「吉田くんち」和やかに。

        • 2023.10.15 Sunday
        • 12:30

        10月6日〜7日、当神社例大祭「吉田くんち」がとりおこなわれました。

        コロナの第5類移行後初の開催となり4年ぶりに全面的な通常開催が期される中、当神社ではウィズコロナまたインフルエンザの流行にも配慮して、こども神輿の縮小やお神輿行列の人数を制限するなどなお慎重な配慮がなされましたが、総じてコロナ禍前の賑やかな祭りが復活しました。

        お旅所も多くの人出で賑わい、様々な演芸や沢山の出店を楽しむ人々の笑顔に満ちて、神様とともに神人和楽の一夜となりました。

        二日目、お神輿がご本社にご到着後、正午からの例大祭には70名余りの参列を得て10名の神職が奉仕して厳粛盛大裡に執り行われ、直会では祭りの成功を讃え労を労いつつ明日への英気を養いました。

        多くの方々が会議を重ね、祭りの準備に当たり、二日間の祭りに参加し、速やかに後片付けに勤しまれました。

         

        本年も陰に陽に様々な形でご尽力いただきました全ての皆様に、祭りの後の寂寥感を覚えつつ心から感謝御礼申し上げます。本当にお疲れさまでした。ありがとうございました。

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          戦後78年目の終戦の日に

          • 2023.08.15 Tuesday
          • 17:00

          毎月15日朝7時は月次祭(朝粥会)。毎年8月の月次祭は終戦の日に当たり、祭典に引き続き戦没者追悼の行事を行っています。

          本年は終戦の詔書(原文及び現代語訳)を全員で奉読。終戦のご聖断を下された昭和天皇の大御心を拝した後、全員で三百万余の戦没者の御霊に黙祷を捧げました。また、「戦犯は日本に存在しない」ことの資料を配布し、わが国はいわゆる「戦犯」をA級とBC級の区別なく独立回復後に全て法的に復権しており、その時点から「戦犯」はもはや存在していない旨を確認しました。

           

          天皇陛下は上皇様が皇太子時代に述べられた「日本人が決して忘れてはならない四つの日」を受け継がれ大切にされています。四つの日とは6月23日沖縄慰霊の日、8月6日広島原爆の日、8月9日長崎原爆の日、8月15日終戦の日です。上皇ご夫妻は毎年欠かさずこの日にご一家で黙祷をささげてこられ、皇室の伝統となっています。

           

          戦後78年のこんにち、内に外に平和とは言えない状況がある中で私たち国民も、数多の戦没者の犠牲の上に生かされていることをあらためて思い起こし、感謝の誠を捧げ、世界の恒久平和のために一人一人が努力してゆく誓いを立てる、そうした特別な日として終戦の日を過ごさなければならないと思います。

           

          今朝は多忙なお盆にもかかわらず15名のご参列をいただきました。参列者は神仏基様々な宗教の言わば信者の方ですが、神社はどなたでも自由に参列できる集いの場でもあります。今年も思想信条を超えて恒久平和を希求する真心をつなぐ「戦没者を追悼し平和を祈念する日」のひと時となりました。

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            ご英霊のご遺徳を偲んで清掃奉仕

            • 2023.08.07 Monday
            • 20:15

            今日は夕刻から戦没者遺族会会員有志で、吉井忠霊碑の清掃奉仕を行いました。

            毎年この時期、お盆と終戦の日を前に御英霊のご遺徳を偲び、感謝の誠を捧げ、世界の恒久平和を祈りつつご奉仕申し上げております。

             

            ❖吉井忠霊碑について

            全国津々浦々にある「忠魂碑」(忠霊塔・忠霊碑・招魂碑など)は、明治維新以降、日清、日露戦争をはじめ先の大戦にいたる戦いで祖国のために散華せられた戦没者に慰霊の誠を尽くし、そのご遺徳を顕彰することを目的に、出身地自治体や地縁団体、ご遺族戦友関係等の発起により建立されました。しかし、戦前に建てられた多くの忠魂碑は敗戦後、占領軍の指令により撤去された経緯があります。▼『吉井町郷土誌』(昭和41年発行) によれば、現在の吉井慰霊碑(吉井町大渡)は独立回復後の昭和28年4月、町民からの浄財も募り総工費90万円で建立されました。戦前からあった忠魂碑は大迫尚道中将(後、陸軍大将)の揮毫によるものでしたが、前述のごとく戦後間もなく倒され、数年を経て今の忠霊碑の礎石に納められたということです。また、同碑には、吉井町出身のご英霊(戦没者)三百三十柱のお名前が刻まれています。▼現在では戦没者遺族会の会員及び有志の方々が碑の清掃・管理に当たられ、毎年4月12日に遺族会が主催して、吉井地区戦没者慰霊追悼式が挙行されています。▼今年は戦後78年。戦争を語り継ぐ人々が少なくなる中、戦没者の犠牲の上にある今の平和の尊さを子や孫へ伝えてゆくために、また、ご英霊と向き合う慰霊碑として、地域住民皆で大切に守り伝えたいと思います。

             

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              佐世保松浦党研究会

              • 2023.07.25 Tuesday
              • 17:20

              「佐世保松浦党研究会」の皆様が現地視察研修に来社され、宮司講話として現存する棟札の紹介と共に神社制度の変遷について拙いお話を申し上げました。

               

              同会では、『甲子夜話(かっしやわ)』の著者としても有名な平戸松浦家第34代当主、松浦静山公が総裁となって編纂された『田舎廻(いなかまわり)神社仏閣並古城址古墳等相糺帳(あいただすちょう)』23冊(松浦史料博物館蔵)の資料化に着手されており、その一環として当地(旧吉田村)だけでも24社が掲載される膨大な記録の現地調査に当たられています。

              当地(吉田村)の記録は寛政11年(1799)の記述で、社殿・ご祭神・ご神体・宝物・棟札・伝承などが記録され、220年以上を経て記載の通り現存していることが確認され、しかも記載される24社全ての祭祀が絶えることなく現在に継承されている事実をお話し申し上げると参加者は、あらためて当地の習俗に関心を寄せていました。

              同会会員各位の尊いご尽力により、同資料の無事発行をお祈り申し上げます。

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                六根清浄、神恩感謝の夏越し祭り

                • 2023.07.17 Monday
                • 14:25

                7月15日は春日神社夏越し祭り。当日は梅雨も中休みか晴れ間がのぞく好天に恵まれ、定刻午後7時の大祓い神事に約200名が参列、祇園灯ろうが幽玄に境内を照らし笛の音が鎮守の森に木霊する中を恭しく茅の輪をくぐり、すがすがしさに満ち満ちて、喜びのままに拝礼しました。

                 

                 

                コロナ禍はいまだ収束には至りませんが、第5類移行後初めての当社恒例祭となりました。今回は4年ぶりの通常開催となり、祭典後の「直会」(なおらい)も執り行われました。また、恒例の夜神楽もコロナ鎮静化の神恩感謝として規模を拡大、神職7名により約2時間にわたり平戸神楽が奉納され、拝観者の拍手喝さいと相まって神楽座はいよいよ熱を帯び、時間の経過を忘れるほど神人和楽のまたとない貴重な夏一夜となりました。

                 

                 

                 

                ※茅の輪は7月25日まで設置していますので、ご都合の良いときに茅の輪くぐりをしてお参りください。また、祇園灯ろうは大風が吹かない限りお盆頃まで設置する予定です。風鈴の音とともに夏詣でをお楽しみ下さい。

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                  カスガのホタル

                  • 2023.06.01 Thursday
                  • 19:13

                  世界的ホタル学者「神田左京」ゆかりの神社にして、ホタルの名所としても知る人ぞ知る当神社。鎮守の森に飛び交う蛍火の幻想的な世界に触れようと今年も、初夏のしっぽりとした宵闇の中、家族連れなど多くの人が蛍狩りに訪れました。

                  例年よりも10日ほども早く光りだした春日のホタル。それをいち早く確認したのが地元放課後子どもクラブ関係者でした。コロナ禍で見送られてきた同クラブ主催のホタル観賞会が去る5月21日、保護者をむくむ70余名が参加して4年ぶりに開催されました。

                  夜の帳が下りた境内は、子どもたちの歓声とため息に応えるかのように蛍火がひときわ明滅乱舞し、しばし時を忘れるほど美しいものでした。こどもたちの心に、ふるさとの原風景の一つして残るものとなったのであれば幸いです。

                   

                  ※ピークは過ぎましたが、境内周囲を流れる「春日川」沿いで6月中旬ごろまでは観賞できると思われます。足元には十分ご注意の上、自己責任にてお楽しみください。

                  ※なお、「神田左京」については、当ホームページに掲載していますのでご高覧ください。また、休憩所「はる日の木」の図書コーナーに、当神社にも度々お越しいただいている世界的昆虫写真家「栗林慧さん」が子供向けに制作された科学のアルバム『ホタル 光のひみつ』を収蔵しています。大人が読んで興味津々の名著ですので、是非手に取ってお読みください。

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                    雨過天晴

                    • 2023.05.03 Wednesday
                    • 17:48

                    4月29日に少雨決行にて開催を予定していた第9回「よしい春日の森『楽市』」は悪天候が予想され実行委員会は、急遽開催二日前に一日延期を決定、翌30日(日)に実施されました。この英断により当日は夜半まで降り続いた大雨が夜明けとともにピタリと止み、抜けるような青空のもと40店舗のカラフルなテントに彩られた新緑映える境内は、黄金週間と相まって老若男女多くの人出で賑わいました。※当日の様子はインスタグラム(「よしい春日の森」で検索)でご覧ください。

                     

                     

                     

                    雨後の足元の悪さとともに期日変更に伴う出店数の減少や音楽イベントの中止など人出への影響が心配されましたが全て杞憂に終わり、実行委員会の決断力と行動力、出店者の柔軟な対応、関係各団体のご協力によりこれまでにない爽やかで晴れやかな催しとなりました。これも、「つつづける・つながる・つとめる」の三つの「つ」をモットーに取り組む努力の蓄積と、春日の大神様のご神慮の賜物と深く感じ入った次第です。

                    ☆10回目となる次回は11月に開催されます☆彡

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